BLOGブログ
不動産の相続登記に関する手続きや時間、費用について
相続登記を行わないとどうなるでしょうか?
株式会社KHCのパートナー企業である、よしかわ司法書士事務所 吉川 雅史 が、
不動産の相続登記をしないと起こるデメリットを解説していきます。
不動産を相続しましたら、相続登記を行う必要がございます。
まずは、こちらが大原則でございます。
ただ、相続登記には期限の制限がございません。
他の相続の手続き、例えば、相続税の申告については10ヶ月以内、
相続放棄の手続きについては原則3ヶ月以内というように期限の制限がありますが、
不動産の相続登記には申し上げたとおり、このような制限がございません。
相続登記は相続人の方がご自身で行うことも出来ますが、それでもかなりの手間がかかります。
また、登記申請には登録免許税という税金を納めなければならないですし、
司法書士に依頼しようものならさらに費用がかかってしまう。
そして、他の相続に関する手続きのように期限の制限がない、
ということで、どうしても手続きされるのがおっくうになり、
そのまま長年の間放置されてしまうということがございます。
ただ、そのまま、何も手続きをなされずに放置されても、
何かしら状況が良くなる(例えば、国がいつの間にか登記手続きを完了してくれている)
ということは、残念ながら一切ございません。
そこで、相続登記をなされずに、放置された場合にどのような不利益が生じてしまうかを
お話しさせていただければと思います。
① 不動産を売却することが出来ません
例えば、不動産の名義人である親御様が亡くなられた場合に、
相続人であるご自身がそのまま住まれるということはあるでしょうし、
また親御様とは同居なされずに別に世帯を持っておられるということもあるでしょう。
その中で、親御様が亡くなられた場合に空き家になってしまう場合に、それでは売却しようということがあると思います。
しかし、相続登記が出来ていない場合には、せっかく買ってくださるという方が現れても、
買い主様への移転登記ができず、相続登記が出来ていないがゆえにタイミングを失ってしまい、
売買の契約自体が成立しないことがあるかもしれません。
② 相続関係が複雑になってしまいます
相続登記を行わず、長年経ってしまうと、その間に他の相続人の方が亡くなってしまうということがあると思います。
そのようなことになると、その亡くなった方の例えば奥さんやお子様に権利が移ってしまい、
また、その方が亡くなって・・・ ということで、
いざ相続登記をやろうとしてもたくさんの方の同意が必要となってしまい、
結局相続登記が出来なくなってしまうということがあり得るということになります。
場合によっては、相続人の方で結婚・離婚を繰り返され、
そのときごとにお子様がおられるという方が亡くなられた場合にも相続人が増えてしまい、
手続きが大変になるということも考えられます。
そのようなことになると、先ほど①で申し上げた不動産の売却が難しくなるということと、
ご自身が住まれている不動産が多くの方の共有状態のままになってしまうことになる恐れがございます。
また、相続登記に当たって、例えば、たくさんの相続人(共有者)の中から一人
もしくは数人を代表者として名義を引き受けてもらうという形で手続きを行うとしても、
この場合は原則、遺産分割協議書(相続人の皆さんで不動産の名義をこの方にするという旨を同意しましたという書面)を作成し、
その書面には皆様の実印を押していただき、さらに印鑑証明書を添付するということが必要となります。
よって、相続人の方が多数にわたると、この同意を取り付けることが非常に難しくなります。
③ 相続登記の手続き自体が難しくなります
相続登記をするには、まず、お亡くなりになった方(Aさん)の出生から死亡までのすべての戸籍、
相続人の方(Bさん)の現在の戸籍をその方々の本籍地の市区町村で取得する必要があるのですが、
Aさんがお亡くなりになった後、長年手続きを行わず、②で申し上げたとおり、
相続人の方(Bさん)がその後亡くなられた場合は、
Aさんについても出生から死亡までの戸籍を集めなければならなくなります。
相続人の方の場合は、本来であれば現在の戸籍のみを取得すれば良いのですが、
不動産の名義人の方が亡くなられて、その後に相続人の方が亡くなられた場合は、
その方についても名義人の方と同じだけの戸籍を集めなければならないということになります。
私自身の経験でも、不動産の名義人の方が亡くなられて、
30年ほど相続登記をしておられない方からのご依頼があったのですが、
そのときには結局相続人が30人おられて、戸籍をすべて収集するのに
10ヶ月程度かかったということがありました。
また、こちらは少し専門的な話になるのですが、相続登記の申請には、
亡くなられた方の住民票の除票が必要なのですが、
市役所等の除票の保存期限は亡くなられてから5年とされています(今後伸長されるということですが)。
亡くなられてから何年も経っておられる方の場合は、除票を取得することが出来なくなります。
そのような場合は、本来相続登記自体には必要の無かった権利証
(ただ権利証も亡くなられて何年も経っておられれば見つからないという可能性も高いかと思われます)、
すべての相続人の方からの上申書等(実印を押して、印鑑証明書を付ける)
を別途添付して登記申請するという必要が出てきます
(これらの手続きは法務局によって運用が違いますので事前に確認する必要がございます)。
やはり、別途費用・手間・時間がかかってしまうことになってしまいます。
④ 以上、申し上げましたとおり、相続登記には期限の制限がございません。
また、手続きをしていないがために国からペナルティーを課せられるということもございません。
そして、手続きに当たっては、どうしても手間と費用がかかってしまう。
ですので、長年にわたって放置されてしまうということが多々ございます。
しかし、そのまま放置されますと、いざ、ご売却という際に、
相続登記が出来ていないがゆえに売却が出来なかったり、
多数の方の協力を得なければ相続登記が出来ないということが起こります。
相続登記をなされずに放置され、その後の不利益を受けられてしまうのは放置をされたその方ではなく、
そのお子様、お孫様、お子様がおられない場合は、ご自身のご兄弟のお子様、お孫様に
手間と費用をかけてしまうということになってしまいかねません。
そのようなことにならないためにも、相続登記はご自身の代で済ませてしまわれることをおすすめいたします。
執筆者:司法書士 吉川 雅史(よしかわ司法書士事務所)
2011年 京都司法書士会に司法書士登録
http://www.yoshikawa-shihou.com/index.html